大分で会いましょう。vol.1 Review
  • 小林エリカ(漫画家・作家)
  • 平野紗季子(フードエッセイスト)
2018年8月22日(水) / 
cue(竹田市)
小林エリカ(漫画家・作家) 小説家、漫画家、アーティストとして様々な方面で活躍中。小説『マダム・キュリーと朝食を』では三島由紀夫賞、芥川龍之介賞の候補に。
平野紗季子(フードエッセイスト) オーストリア 小学生の頃から食日記をつけている自称「ごはん狂」。著書『生まれた時からアルデンテ』の他、連載多数。
初日はオットエセッテさんのコースランチ、鉄輪ぶらぶら。場所を竹田に移してラムネ温泉さん、オレクトロニカ・ランドさん、竹田美學さん、竹田ホステルcueさんで収録、私は宿泊もお世話になりました。出演してくれた桑さんのリカドで打ち上げ。(映像には出ないと思うが、最後はみんなで歌いまくったスナックかぐや姫さんでした。笑)

次の日はサフラン農家の八世屋さん、豊後大野に行ってタオ・オーガニックマーケットさんにお邪魔致しました。(空港に向かう前、カモシカにも寄れました。)
みなさま大変お世話になりました。大分で、それぞれの場所でそれぞれに輝く綺羅星のような方たち・場所を、訪ねるたびに、「大分で暮らしていてよかったな、明日からもがんばろう」と思えるのです。

そういうすごくリージョナル(地域限定的)でプライベートな歓びの感情が、人それぞれに結びつくことできっと僕らの「誇り」が醸成されていくのだといつも思います。
舞台裏のようなそんな気持ちの発露の現場を、小林エリカさん、平野紗季子さんという麗しく、抜群に聡明な女性おふたりと、体験できたことはかけがえのない時間でした。
さてどうしても書いておきたいが、僕は小林エリカさんの「この気持ち いったい何語だったらつうじるの?」という本の大ファンです。
小さな存在としての自分自身が、世界中の他者や外部にいかに接続していけるのか?
人間の正しい在り方ってどんななのか?
そんなシンプルで根源的な問いを丁寧に立て、近道をせず、自分自身で粘り強く歩み、等身大の答えを、藝術やエスペラント語、そして歴史の勉強の中に見出していく。10代の人にぜひとも読んでほしい隠れた傑作です。


話題作、小説「マダム・キュリーと朝食を」では科学発展の中で置き去りにされたもの、虐待されたもの、に目を向ける。いつも「なぜ? どうして? そもそもそれは正しいの?」と誰よりも先に声を上げる勇気を持つ人なんだと思います。
僭越ながら僕は勝手に、ものすごく気が合うような気がしていて、わくわくして話しました。
エリカさんは、いつもペンを肌身離さず持って、メモ書きのように、ことあれば目の前の物や景色を、押し花みたいに小さなノートに写し取ります。
そうそう、初日の夕方に、虹が出たのです。竹田の空に巨大なトンネルのような虹が現れ、すかさずエリカさんはスケッチしていました。
なにかの祝福のようで、心地よい瞬間でした。
平野紗季子さんに会うのは、最初は正直少し緊張しました。
平野さんは僕よりひとまわり年下ですが、著書「生まれた時からアルデンテ」から窺い知る人間像は、まさに天才だったからです。
そのうえ、なんだかやんごとなき生い立ちであることもやはり書籍から伝わってきたし、宮沢賢治や太宰治に見るように、名家の出自の人間が反骨心を持って育つとき、ときに一文化を担うような巨人になっていくことを彷彿とさせられてもいたからかもしれません。
平野さんは文章で北大路魯山人を引き合いに出すときもあり、やはりどこか苛烈な人物像に共鳴されておられるのかな、と僕は身構えもしていたかもしれません。


こういう風に書くと、当然実際にお会いするととんでもなく素敵だった、ということになるのですが、もちろんその通りです。小動物のような端正な表情にも、人当たりの柔らかさも忘れられない思い出ですが、やはり白眉は、食べ物をちょっと舌にのせて「アンチョビバター」、「トマト」というように何かつぶやくときです。
プロボクサーのジャブを見たときのように、戦慄の情を抱くような、迫力がありました。
きっと、自分の生涯をかけて歩みたい「道」が、この仕事を行けるところまで遠くまで歩みたい、という「志」が、何気ない言葉の中に、ずっしりと溶け込んでいる、稀有な方だと思います。
エリカさんは初めての大分県。平野さんはお母様の実家が佐伯市ということで、何度も来てくれているようですが、お二人とも存分に、新しい、これからの、大分、を楽しんでもらえたのではないかと思います。
「自分のいるところが世界の中心だと信じることが出来た人間に初めて、創造は附随してくる」というのは敬愛する大分県立美術館館長 新見先生の言葉ですが、大分を楽しみ、理解するということは世界を知ることそのものです。そう信じぬいて初めて、何か新しいものを作ることが出来るのだと思います。
小林エリカさんや平野紗季子さんのような新しい才能には、究極的にはやはり、「新しい社会規範」を作っていってほしい。だからまた大分に来てほしい。
大分にいる僕らは、僕らが世界の最先端だと、叫び続けよう。

岩尾晋作
(カモシカ書店店主、「大分で会いましょう。」コーディネーター)